さて、今年も“煩誕祭”こと ほしみさんの誕生日が近づいてきた。ほしみさんの誕生日は日本国民がわざわざ会社や学校を休んで、こぞって祝ってくれる(要するに祝日なのだ)のだが、今年はゴールド免許保持者である ほしみさんの自動車運転免許更新の年でもある。誕生日の前後には運転免許証の更新手続きを取らなければならない。
そんなわけで、先日、地元の運転免許センターに出かけてきたのだが、そのときのこと。
自動車運転免許の更新というと、その手続きの中に当然視力検査が含まれる。そこで、手続き待ちの人たちの中から何人かが係の人たちによって視力測定コーナーへと呼び出された。視力測定コーナーには視力を計測するための機械が二台設置されており、それで自動車を運転するのに十分な視力があるかどうか検証するわけだ。ほしみさんが呼び出されたとき、順番では ほしみさんの前に、とある爺さんが優先になっていた。背中の曲がった、かなり年かさな矮躯の老人である。
以下、その爺さんと、視力測定係のお姉さんの会話。
お姉さん(以下、姉):「はい。それでは、××さん。ただ今より視力検査を行います。この機械の中を覗いてください」
爺さん(以下、爺):「はい(よぼよぼな感じで機械を覗き込む)」
姉:「(事務的な口調で)中に輪っかが見えますね? その輪が切れている方向を教えてください」
爺:「……えと……。どこも切れてないんですが」
姉:「……ゑ? (やや動揺しつつ)そ、そんなことはありません。どこかが切れているはずです」
爺:「(逡巡しながら)……それじゃ、えーと……左?」
姉:「よく見えませんか。それじゃ(機械をちょいちょいと操作して)これではどうですか?」
爺:「えーと……。左、ですか?」
姉:「これもだめですか。(再び、機械をちょいちょいといじり)これではどうでしょう?」
爺:「えーと……。左?」
姉:「(ブチ切れそーになりながら)違います。(またしても機械をいじりつつ)設定をもう一段階下げました。これはどう見えますか?」
爺:「……左ですかね?」
姉:「(半ば絶叫で)違います! (機械をやや手荒に扱いつつ)これなら、どうでしょう?」
爺:「……下、ですか?」
姉:「(正解だったのか、ちょっとほっとして)それでは、こちらは?」
爺:「左」
姉:「(完全にブチ切れた口調で)違います! ××さん、あなたは車を運転するのに必要な〇・七の視力が確認できませんでしたので、後で再検査を行います。よろしいですねッ!?」
爺:「(お姉さんの激しい口調に半ば押されながら)……は、はあ……」
ってなわけで、要するによぼよぼの爺さんが視力不良で免許証の交付が危うくなったというだけの話なのだが、その場に居合わせた ほしみさんはこみ上げてくる爆笑をこらえるのにえらく苦労することになった。ギャグの基本は同じネタの繰り返しだとはよく言われることだが、爺さんが「左」と答えるたびに、お姉さんのテンションが上昇していくのが腹の皮がよじれるかと思うほどおかしかった。たかが運転免許の更新で思わぬエンターテイメントに遭遇するのはご勘弁いただきたい。










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